1.株式会社キーマンが解説!耐震における3工法の違い
東日本大震災や熊本地震を経て、全国各地でさらなる大規模地震の発生が懸念されている昨今、建物の地震対策が一層注目されるようになっています。
それ以前から、新耐震基準が定められた1981年以前に建てられた建物の多くで耐震補強工事が進められており、新たに建築される場合には免震や制震といった工法も導入され、大規模地震への備えが一層強化されてきました。
多くの人が日常的に免震・制震・耐震という用語に接するようになっていますが、それら工法の違いを明確に把握している人はあまり多くないのが現状です。今後新たな住まいを求める人は3工法の違いを一通り理解して、それぞれのメリット・デメリットから選択する際の判断材料の一つにする必要があります。
近隣の公共施設や商業ビルなどを利用する際にも、その建物がどんな工法で地震への備えを行っているのかを意識しておくほうが、万が一の避難の際にも役立ちます。
○耐震工法
3つの工法のうち最も身近といえるのが耐震工法で、新築のみならず既に建てられている建築物への補強としても一般的です。
ブレースとも呼ばれる筋交いや外付けフレームなどで壁や柱を強化したり、内部に補強材を入れるなどして建物を堅固にすることで地震の揺れに耐えるようにします。
大規模地震の際に建物が瞬時に倒壊することを防ぎ、建物内にいる人が安全に避難できることを目的にした工法です。
そのため建物が受ける地震の揺れを低減させることを目的にした免震工法や制震工法と違って、建物には地震の揺れが直接伝わってしまいます。
建物自体の補強と共に家具の固定などを行っておかなければ室内で怪我をするリスクが上がってしまうことになり、その点がデメリットと言えます。
その一方で3つの工法の中では比較的安価に施工できるというメリットがあり、㈱キーマンも解説していますが、一般住宅で最も導入しやすい地震対策となっています。
○免震工法
反対に最も費用がかかるのが免震工法です。
こちらは補強工事ではなく、主に一般住宅の場合は建物と基礎との間に免震装置を設置することで地盤とは切り離すような状態にして、地震の大きな揺れが建物に伝わらないようにします。
免震装置にはいくつかの種類がありますが、いずれも装置が揺れを吸収することで建物自体がダメージを受けるリスクを低減させ、家具の転倒や破損を防ぐことも可能です。
現状では3つの工法の中で最も良い建物への地震対策と考えられていますが、最大のデメリットが施工費用が高額になることです。
免震装置そのものが高価な上、施工が難しいことから免震工法を実施できる業者が限られるという点もデメリットとして挙げられています。
基礎や土台の工事がカギとなることからリフォームで免震工法を導入するのは難しく、新築の際に施工するのが現実的ですが、コストの高さと共に工期が長くなることも考慮しておく必要があります。
○制震工法
3つの地震対策のうち制震工法は、制震ダンパーの検査データ改ざん問題がニュースになって以降、不名誉な形で改めて注目されるようになりました。
問題となった制震ダンパーは油圧や粘弾性ゴムを使った装置で、地震の揺れをダンパーが吸収することで大きな揺れを建物に伝えにくくします。
制震工法は免震と違って地震の揺れは建物に伝わってしまいますが、上層階ほど揺れが大きくなる高層ビルへの対策として有効性が高いことから、マンションなどへの導入も増えています。
余震など繰り返す揺れから建物が損傷するのを防ぎ、2階や3階への揺れも抑えることが可能ということで、戸建て住宅向けの制震工法も登場するようになりました。
免震工法と同様にデメリットは施工費用の高さですが、免震ほど高額ではなく、後付けの制震装置もあることから、リフォームの際にも活用できる地震対策になりつつあります。
検査データ改ざん問題が明らかになったことで業界全体の意識改革が進み、今後は制震ダンパーの品質が適正な形で向上して行くことが予想され、耐震工法との組み合わせで建物の損傷を防ぐ効果が一層上がることも期待されています。
2.地震対策としては結局どれがおすすめ?
3つの工法の中では免震工法が最も有効性が高く安心できるイメージがありますが、すべての地震に対して万全というわけではありません。
横揺れに対しての免震効果は高いものの、直下型地震に見舞われた際の縦揺れには弱いことが指摘されています。
大規模地震に対しては優れた効果を発揮する免震装置ですが、中程度の揺れの場合装置が作動しない可能性があり、家具の固定や高いところに重い物は載せないなどの対策は怠るべきではないと言われています。
これから住宅を新築する場合は費用面などの諸問題をクリアすれば免震工法や制震工法を選ぶことも可能ですが、既存の建物に対策を施す場合は耐震補強工事が現実的です。
大規模地震で倒壊した木造住宅の多くがシロアリ被害に遭っていたことなども考慮し、雨漏りによる湿気で繁殖する木材腐朽菌や、それを好むシロアリ対策を強化しておくことも地震への大切な備えになります。
最終更新日 2025年6月10日 by kairak